減損会計

まずは減損って何。とある製品の製造工場を100億円で建てたとして、数年後に当該製品に関する事業が赤字続きなったとき、通常の減価償却していれば簿価60億円だけど、当該製造工場では簿価に見合う収益が稼げないよ…というときに、簿価を本来の価値にまで減額した方がいいいんじゃないの?という論点。

簿価を本来の価値に戻すやり方として、時価評価が手っ取り早い。すなわち、当該工場の時価は30億円なので、簿価も30億円にしましょうというやり方。ただ、ここで会計の考え方が影響する。

製造工場は、製品を作って販売して稼ぐことを考えて建てている。難しく言うと、市場平均を超える成果を期待して事業に使われていることになる。そうなると、当該工場の価値、例えば地価がアップしても、それだけで当該企業が儲かったとはならないし、工場を売却するわけではないので、地価アップによる儲けが現実に手に入るわけでもない。だから、事業用資産は、時価評価ではなく、取得原価から減価償却等を控除した金額で評価することとなっている。

しかし、先ほどのような事情がある場合に、簿価をそのままにしていいの?という問題がある。そのため、時価評価の枠組みではなく、さきほどの取得原価の枠組み(取得原価基準)のもとで、帳簿価額を減額しようという処理になる。そのときの理屈として、収益性が当初の予想より低下し、資産の回収可能性を帳簿価額に反映する必要があるなどと言って、帳簿価格の臨時的な減額を認めるのである。

それじゃあ、耐用年数の短縮や残存価額の修正に基づいて減価償却累計額を修正する臨時償却というやり方も考えられる。ただ、このやり方は収益性の低下を帳簿価額に反映すること自体を目的する会計処理ではないので、新たな会計処理が必要になる。

そこで、減損処理。

減損ってどういう場合に生じるものなのか?

固定資産への投資は,その事業から回収された金額が投資額を十分に上回ることを期待して実施されたものであるが,その後の技術革新市場環境変化などによって,その資産の収益性が急激に低下することがある。固定資産の収益性の低下により,投資額の完全な回収が見込めなくなった状態を減損という。

減損が生じた場合にどうすればよいのか?

固定資産からの回収可能価額の低下を反映させるように,帳簿価格を減額する減損処理を行わなければならない。

なお、回収可能性について、本来は投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、投資額の回収が見込めなくなった時点で減損処理を考えることになるが、制度上は、期末の帳簿価額を将来の回収回収可能性に照らして見直すだけである。でも、制度では、過年度の回収額を考慮すれば投資期間全体を通じて投資額の回収が見込める場合もあるし、過年度の減価償却などを修正したときには、修正後の帳簿価額の回収が見込める場合も有りうるから、将来の回収可能性を考慮するだけでは減損損失を正しく認識はできない。

減損処理の本質の本質:固定資産の過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理

取得原価基準の下で行われる費用配分手続:回収不能額を当期の費用に配分し、残額として将来の収益に対応する回収可能原価を繰り越すものであり、費用配分を重視している。

金融商品の時価評価との違い:時価評価は、資産価値の変動によって利益測定を行い、決算日における資産価値をBSに表示することを目的とするが、減損処理は取得原価基準のもとで行われる帳簿価格の臨時的な減額

それじゃあ,減損処理はどのように行うのか?

まずは減損の判定範囲が問題になる。

他の固定資産からおおむね独立したキャッシュ・フローを生み出すか否かを基準として,減損の判定単位へできるだけ細かく区分する。その判定範囲は,単独の資産からなることもあれば,多数の資産を含む資産グループのこともある

資産グループを最小単位で行う理由

最小の単位で行わないと,収益性が十分にある資産とそうでない資産の割引前キャッシュフローが合算されてしまって,減損損失を適切に認識できなくなる。

のれんや共用資産があった場合はどうするのか?

複数の資産グループを合体させて,より大きな判定単位にを形成して判定するのが原則であるが,のれんや共用資産の帳簿価額を各資産グループに配分してもよい。

それじゃ,減損の計算はどうやっておこなうのか?

減損処理の手順
  • STEP1
    減損の兆候

    最初に減損の兆候の有無を検討する

    減損が生じている可能性を示す事象

    ①営業活動からのキャッシュフローが継続的なマイナス
    ②事業再編の実施(リストラクチャリングの結果,遊休資産になるなどか)
    ③経営環境の著しい悪化
    ④当該資産の市場価格の著しい下落

  • STEP2
    割引前キャッシュフローとの比較

    当該資産から生み出される将来キャッシュフロー(割引前)の合計額を見積もり,その額が帳簿価額を下回る場合には減損損失を認識する。

    割引後の現在価値ではなく,割引前のキャッシュフローと比較するのはなぜ?

    減損損失の測定は、将来キャッシュフローの見積もりに大きく依存する。成果の不確実な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるをえない。その点を考慮すると、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って,減損損失を認識するのが適当である。

A×(減損なし)
B×(減損なし)△6400
C△6400
△3,800(増加分)共有資産△1,300
より大きな単位△10,200A△1,000
B△1,500
より大きな単位になるとどのくらい減損損失が増加するか,増加分を先に共有資産に割り当てる,残りを分配する。このときに,例えばBに減損の兆候がなくても分配することに注意する。

将来キャッシュフローの算定はどうなるかな?

例えば主要な資産が25年,サブの構成資産が10年のケース

サブの構成資産は取替を前提とする(原則・容認法の区別はない),21年目以降のキャッシュフローは20年経過時点に割り引いて加算する。

主要な構成資産が25年,サブの構成資産が30年のケース

主要な資産の経済的残存年数25年経過時点におけるサブの構成資産の回収可能価額(正味売却価額)を,21年目以降に見込まれる将来キャッシュフローに加算する。そして,20年経過時点に割り引くことになる。

主要な資産が10年,サブの構成資産が15年のケース

原則法は,主要な資産の経済的残存耐用年数10年経過時点におけるサブの構成資産の回収可能価額(正味売却価額)を,単純に加算する(割引計算もない)

例外法は,主要な資産の取替の合理的な計画を考慮するとき,サブの構成資産の正味売却価額に代えて,合理的な計画に従って算定した資産グループ(A’,B)から生じる将来キャッシュフローの10年経過時点における現在価値を割引前キャッシュフローに含めることができる。(20年超えていないのに,割引計算する場合があるということに注意)

遊休資産から生じるキャッシュフローは,将来キャッシュフローの見積もりに含める。

本社費等の間接的な支出は,将来キャッシュフローの見積もりに含める。

利息の支払額,法人税の支払額及び還付額は,将来キャッシュフローの見積もりに含めない。なぜなら,これらの費用は固定資産の処分及び使用から直接的に生じる項目ではないからである。

資産除去債務の費用:既に計上されている場合には,二重計上になるので,将来キャッシュフローの見積もりに含めない。